チャイコフスキー、ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲
甘ったるく華美なチャイコフスキーはこの人からは期待していなかったが、その通りだった。しかし、それが悪いのかというと、それはまったくない。むしろすばらしいと思う。
下手すれば安っぽく感動を押し付けるがごとき音楽に成り下がってしまうチャイコフスキーだが(そういうところも含めて大好き)、ツィンマーマンにかかると端正なメロディが浮かび上がってくる。一切刺激的な音を発することもないのも毎度のことではあるが、このアルバムでは特にその傾向が強い。ヒステリカルにならず、淡々とメロディを丁寧につむぎだしていく。そのおかげで、トゥッティが生き生きと聞こえ、それが故にチャイコフスキーならではドラマティックな展開が聴ける。
とにかくこれだけ安定したチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲はなかなか聴けないのではないだろうか?
ハイフェッツとライナーの颯爽とした演奏もいいし、パールマンとオーマンディの華麗な演奏もすばらしい。そういった名盤、愛聴盤の列にこの安定感抜群なツィンマーマンとホーネックの演奏を加えたいと思う。
チャイコフスキーのほうばかり触れてしまったがブルッフのほうもしっかりとした構成で演奏されている名演。