2003年阪神タイガース珍プレー 2 阪神タイガースモバイル

阪神タイガース暗黒時代再び (宝島社新書)

　センセーショナルな題名とは裏腹に、多角的に、冷静にタイガースの過去、現在、未来を論じている好著。
　野村氏自身の監督時代の反省、星野監督〜和田監督までの采配分析、鳥谷敬、平野恵一、藤井彰人ら現戦力の分析、そして来季以降に阪神が再び暗黒時代を迎えるかどうかのポイントについて書かれている。

　自身の反省について書いた部分では、今岡との確執、赤星の発見、新庄、福原や井川に対するアドバイスなどが、90年代末の阪神の回顧録として興味深い。

　岡田以降のタイガースに対する批判は辛辣だが、ごもっともな点が多く、阪神に対する愛情が感じられる。
　ただの空虚な批判とは違い、具体的な試合を挙げて監督の采配や選手のプレーを論じる姿勢がいい。「○月○日○○戦の○回のプレー」というように、本当に具体的なので、ずっと阪神戦を観てきたファンにとってはいろいろな思い出がよみがえって楽しいと思う。

　来季のタイガースについては、藤波を始めとする若手の育成▽鳥谷が真のチームリーダーになれるかどうか▽正捕手をどうするか▽指揮系統がシンプルでない現在のＧＭ制が機能するかどうか―など、さまざまな視点を提供してくれる。

　この手の新書本には中身が薄っぺらいボッタクリ本も多いが、この本は阪神を愛してきた方々にも、来季以降タイガース観戦を楽しみたい方々にも、ぜひお薦めしたい１冊。

　さらには、「阪神タイガース」というちょっと危なっかしい組織をめぐるリーダー論、組織論、チーム論として、企業の経営者や管理職の皆さんにもお薦めしたい。