民主党が日本経済を破壊する (文春新書)
センセーショナルな題名とは裏腹に、財政健全化という従来からの筆者の主張を淡々とながら説得的に述べており、好感を持った。財政健全化は急務であり、誰がどう考えても取るべき手段は消費増税しかあり得ないのだが、こんなときに民主党ポピュリズム政権を持ってしまった我々日本人は不幸(あるいは自業自得)というほかないであろう。莫大な民意のアセットを有していた小泉政権下において、消費増税を行わなかったのは痛恨だったと言うしかない。
筆者の経済政策にはおおむね同意だが、しかしインフレターゲットにあそこまで反対する点はちょっと理解に苦しむ。
全身がん政治家
表題を見たとき、そんなにひどいと思わないかった。
30代での初めての癌。周囲に明かさずの闘病。
それから40年余り。私なら、周囲に感謝しつつ、冷戦に治療に臨むことが出来るだろうか。
治療に当たられたどの医師も「クレバーで我慢強い」とおっしゃるのには、感心するばかりだ。
民主党の閣僚に入ったとき「みっともない」と思ったが、この本を読むと、真剣に日本の将来を考えてのことだったのだと分かった。
また、自民党が下野したとき、各国のぢょうのケースを調べるあたりは、国政に真に取り組んでいるからだと思う。
病院の待合室で、「ここにいる人たちは、みんな、がんなんですよ。喚き散らしたりしている人は、誰ひとりいないでしょう。私だけではないんです。みんな、ひとりで現実を受け止めて、黙って、がんと闘っているんです。みんなそうです。」という言葉が、印象出来でした。
これからは、静かに治療に専念してください。
堂々たる政治 (新潮新書)
全体的には、まあまあの主張をされていますが、肝心な部分の掘り下げが、今一歩の為、パンチにかけてしまいました。政治家として、日本のかじ取りをなさるなら、一番困難な状況でも、柔軟な思考力を失わず、しなやかに、したたかに、動かなければならないはずです。
この本で、一番困難な状況に触れている部分は、対米戦争に突入しようとしている昭和10年代に触れた部分。(P136、138)当時の政府首脳部が、学校秀才と温室育ちで固められ、柔軟性も真の覚悟も欠落していたと、たぶん、おっしゃりたいのだと推察します。ここ何年か、政府首脳部がそんな状況に陥っているようにも見えます。
この意味で、著者ご自身は、東大を出たけれど単なる学校秀才でもなく、政治家として温室育ちでもない事を、多くのページを割いて語られているのでしょう。堂々たる政治家の資質があるようにも見受けられますが、読者に訴えるには、この昭和10年代についての見解を、もっと詳しく、堂々と主張なさるべきだったと思います。
(参考:「誰か戦前を知らないか」山本夏彦著、1999年、文春新書。「現代家族の誕生」岩村伸子著、2005年、勁草書房。「家族と幸福の戦後史」三浦展著、1999年、講談社現代新書。「日本辺境論」内田樹著、2009年、新潮新書。)
割とましな政治家だと言う印象は持ちましたが、本当に混迷の度合いを深めてきている今、真に求められる政治家なのかどうか、今一つ、判断しかねます。