リアルタイムメディアが動かす社会: 市民運動・世論形成・ジャーナリズムの新たな地平
「ネット社会のデマに惑わされないように」「ネットは危険だから慎重に利用するように」など、世界標準では石器時代のような言説が堂々と罷り通る日本のマスメディア…。
そんな風評にウンザリしている人にこの一冊!
海外のネット事情にも精通した講師陣が、世界で今何が起こっているのか?日本で何が起ころうとしているのか?多角的に解説されています。
最近原発関連本を読み漁ってるんですが、その角度から読んでも非常に興味深かったです。
「混沌の今に、ちっぽけな自分でも何かができる!」そう思えました。
検察崩壊 失われた正義
先日、「健全な法治国家のために声をあげる市民の会」が田代政弘元検事、佐久間達哉元特捜部長、木村匡良元主任検事を検察審査会に審査申し立てをし、審査が行われることになった。どういう結果が出るかは予断を許さない状況だ。私は市民の健全な良識が発揮され、起訴相当議決が出ることを心から祈っているが、万一、そうならなかったとしても、「戦後最大の暗黒裁判」とも言われる小沢事件での検察の犯罪とマスメディアの暴走は、歴史の審判を必ず受けることになるであろう。数十年後、数百年後の人たちがこの問題を検証する時、一級の資料となり、貴重な証言になると思われるのが本書「検察崩壊 失われた正義」である。
刺激的な発言が次々と出てくる。
「実際の反訳書などを見ないで、この最高検報告書だけをすべてだと思って見ると、これはこれで、うまくできているんですよ。(中略)過去の事件というのも、全部そうなんですよ。つまり、すべての証拠、資料は検察だけが持っている。捜査や取調べの方法に何かおかしい点があるとか、証拠を見せろと言われても、それは捜査資料だから見せられません、とやる。事実も証拠もすべて自分のところだけに仕舞い込んでおいて、事実を知らない人間に対して、自分たちに都合のいいところだけ伝えて納めてきたんですね。」(小川敏夫)。
「私が田代検事に多少同情的なのは、彼一人で考え、彼一人のみで、問題となった捜査報告書が作られていないということは、取り調べられた私自身がはっきりとわかっています。上の検事はみんな逃げて、田代検事だけが責任をかぶせられてしまった。」(石川知裕)。
「検事が偽証するなら、そんな下手な偽証じゃなくて、もっと上手に嘘をつくと言いたいんでしょうか。それを言うのであれば、この最高検報告書自体が、全く見え透いた下手な「詭弁」「こじつけ」で、とても検察の報告書とは思えない、ということをどう説明するんでしょうか。」(大坪弘道)。
「今回みたいに、重要な政治家であっても、いや、だからこそ、自分がこいつはやっちゃうべきだと思ったらやっちゃう。自分が総理にふさわしくないと思えば、選挙で選ばれても阻んでやる。そういうことに関して、それは絶対にやってはいけないことなんだ、民主主義を踏みにじることなんだ、お前は神様のつもりか、ということが、検事たちはわからなくなってしまっているんじゃないですか。」(八木啓代)。
今回の検察の虚偽捜査報告書問題で、不起訴処分が正式に発表されるまでの過程でのマスメディアの姿も異様なものがあった。報告書や反訳書がインターネットに流出し、誰の目にも検察の犯罪が明らかになった後になっても、「記憶の混同」という詭弁を補強する検察の意図を持ったリークを、ほとんど全ての大新聞が無批判に垂れ流し続け、「不起訴の既成事実化」に能動的に加担していた。畑違いの政治記者ならともかく、専門の司法記者である以上、何もかも分かった上で、検察の犯罪の揉み消しに確信犯的に加担していたとしか思えない。北朝鮮や第二次大戦中の日本ならともかく、21世紀の先進民主主義国の日本でこんなおぞましい光景を見せられるとは思ってもいなかった。
メディアの問題に関しては、本書の中で八木氏が明快に語っている。
「メディア自体が、一連の検察の捜査に乗っかるような形で、無批判な小沢バッシングを今まで繰り広げてきてしまったので、今さら引っ込みがつかないというか、今さら検察が間違っていたと断罪することは、メディアの在り方も間違っていたということを認めることにもなるので、素直に報道できないという部分があるようには感じます。」
この数年間のマスメディアの狂ったような小沢バッシングの中、逆風に怯まず、小沢事件での検察捜査の問題点、異常さをぶれずに指摘し続けてきた著者の郷原信郎氏には心から敬意を表したい。また、今回の貴重な出版を決断した毎日新聞社出版局にも感謝したい。
「検察崩壊 失われた正義」は、歴史の審判を下す後世の人々にも読み継がれる書となるであろう。
ラテンに学ぶ幸せな生き方 (講談社プラスアルファ新書)
ラテンアメリカで歌手として活躍されている八木啓代さんの最新著作。
これまでも八木さんの本は数冊読んでいるが、どれもこれも読みやすく、内容も目からウロコが多いので、今作も期待して読んだ。
今回のテーマは、「人間にとっての幸福とは?」
今日本では、ここ10年に渡って自殺者年間3万人を超え続けており(八木さん曰く、「自殺」とカウントされない自殺も入れると10万人くらいになるのではという話もある)、幸福と感じていない人の割合がどうも高いのでは?一方、日本のちょうど裏側に当たるラテンアメリカ諸国では、日本に比べて物質的には豊でないし、経済的にも貧富の差がまだまだ大きいのに、日本と比較するとなぜか幸福度は高い。
なぜか??は、実際に本を読んで見てほしい。様々な例が、「なるほどなあ」と思い当たるところが多い。
ただ、本書は「だから日本はまだマシ」とかで現状を肯定するものではない(大体が帯に「超格差も貧困も『しょうがない』で割り切っちゃう」と書いてしまっているが、これは本書の内容に対して誤解を生むかもしれない)。この日本の閉塞現状を打破するための「たたかい方を工夫せよ」というメッセージだと私は思う。