サウンド・オブ・ウィルソン・ピケット
昨年逝去されたW.ピケット絶頂期67年の作品。爆走するソウルダイナマイトという感じではなく、粘っこいミディアムテンポのアップ曲と、荒ぶるぶっきらぼうな歌唱で男臭さを感じさせるバラッドがいい感じで配曲されている。前者は大ヒットしたFunky Broadwayをはじめtrack1,6,7、後者はtrack4&5,8,10などが代表的。小難しい節回しを多用せず発声の切れと射出のストレートさやわかりやすさで、ブルーアイドソウルはもちろん多くの白人ロッカーに愛された彼であったが、彼を嗜好したヤング・ラスカルズのLove Is A Beautiful Thingを比較的忠実にカバーするなど他への影響力と共通性の混在も聴きとれる。
佳曲揃い、中でも聴きものはI'm Sorry About Thatかと思う。これは絶唱だ。決して滑らかではないが、荒々しい中に絶妙な強弱による「男泣き」が表現されていて、他の誰にも真似できない名バラッドを完成している。簡潔で情感を抑えたバックが抜群にはまって、ありがちな歌詞ながらも、聴き手の心へ直球で放り込まれる情感にはいつ聴いても胸を打たれる。
Greatest Hits
’60年代のサザンソウルの雄、”ラストソウルマン”ウィルソンピケット全盛期の曲を編集したベストアルバムである。24曲と彼を知るには充分な内容となっている。 ’60年代のサザンソウルを知るには格好の名盤である。
私にとってウィルソンピケットといえば「ダンス天国(Land of 1000 Dances)」である。偶然この曲をラジオで聴いたとき、曲の乗りのよさ、強烈なシャウト、土臭さ、そして男臭さに驚いた。すぐにタワーレコードに走って片っ端からCD(LP)を買った記憶がある。そして、他の代表曲である「In the MIdnigt Hour」「634−5789」「Funky Broadway」「I’m in Love」も知った。
このアルバムはこういった彼の代表曲は当然、他のレビュアーも触れている通りカバー曲も多く収録されているが、彼の声によって新しい曲と生まれ変わっている。
全盛期を過ぎた彼の作品は(例えば’87年のアルバム「American Soul Man」)、曲も洗練(時代に迎合?)され彼らしくなく、いい作品とはいえなかったが、全盛期の彼は間違いなく、一級品のソウルシンガーであった。
彼は’06年1月に心臓発作で亡くなったそうである。晩年は殆ど活動らしい活動はなかったらしく、現在の音楽シーンでは忘れられた存在だった。しかし、彼の残した名曲「ダンス天国」「In the Midnight Hour」はカバーしたアーティストも多い時代を超えた名曲である。
彼の作品でCD化されていないものに、’74年中野サンプラザでのコンサートの模様を収録した2枚組アルバム「LIVE IN JAPAN(当時BMGビクターから発売)」がある。私はLPは持っているのだが今はレコードプレーヤーがなくカセットテープで聴くしかない。彼の唯一のライブアルバムかもしれないので追悼の意味でも是非CD化して欲しい。