パガニーニ:24のカプリース
ここには ヴァイオリンの悪魔 と呼ばれたパガニーニに近いであろうリッチの悪魔らしさというものがある。 あまりに悪魔的で まともに聴くのを少々ためらってしまう。 だが情感不足であるのは否定できない。 ツィマーマンのカプリースと比べると 透明感はないし、感動は少ないであろう。だが リッチは パガニーニの悪魔らしさ というものを適確に見出し、巨匠様式を受け継いで このカプリースを見事完成させたのである。
彼の最初のパガニーニ・カプリースの録音は1947年であるから これは恐らく2回目であろうか(現在まで4回録音しているらしいとのこと)。 彼の他のパガニーニ・カプリースを是非聴いてみたいところである。
サラサーテ:スペイン舞曲集
ルッジェーロ・リッチが亡くなった。8月6日のことだ。
パガニーニの24のカプリース全曲を無伴奏で初録音し、稀代のテクニシャンとして名を馳せた名手だった。
かのハイフェッツに比べると、幾分音程に安定さを欠き、ヴィブラートの独特さが鼻につく人もいたようだが、それはそれでリッチ節として楽しめる人には楽しめた。
この若かりし頃の録音は、師のルイス・パーシンガーを伴奏者に迎えての名演奏である。
サラサーテの舞曲集を集めた本録音は、リッチの抜群の弓捌きがめっぽう面白い。
ハイフェッツほど合理性に徹した演奏ではないのだが、その表現の雄弁性は、今聴いてもまったく色あせない。
パーシンガーの伴奏も、単調なようでいて、ともすると暴走しそうなリッチの危うさをきっちりフォローしている。