ホーキング、宇宙を語る―ビッグバンからブラックホールまで (ハヤカワ文庫NF)
現代科学はあまりにも技術的になってしまって、専門家以外には手におえないものになってしまっているが、本書は一般読者にも理解を促すよう図を交えながら数式を使わずに書かれておりわかり易い。
知を多くの人に還元しようとするホーキング氏の姿勢は多いに評価したい。必要以上の単純化を行うという一般向け書物にありがちな愚に陥らなかった点もバランスが取れていて素晴らしい。
ホーキング、未来を語る (ソフトバンク文庫)
ホーキングは現代宇宙論に対して、2球の剛速球を投げ込んできた。
第1球
時間は、実は、虚数で測られるものではないのか。
これは、観測・実験等からの推測ではなく、純粋に数学的に
「時間を虚数で表すと、数学的に空間と時間が同等となる」という発見から来たものだ。
物理学者や数学者はこの指摘に驚いた。確かに数学的には、極めてエレガントな
高次元でのあたかも「球」のような宇宙が出来上がるのだが、虚数で測られる時間とは
一体何だろう、と議論が沸騰したのだ。
第2球
ブラックホールは輝いている。
これは、不確定性原理をブラックホールの時空の境界線上に適用すると、2つの仮想
粒子の片方はブラックホール側に落ち、もう一方は、ブラックホールの反対側に
飛び出していき、ブラックホールは、光る「球」のように見えるという指摘だった。
ブラックホールはブラックであるという、宇宙論では、当然と思われていたことを
ホーキングは打ち破ったのだ。
本著は、相対論と量子論及びその統一理論全体を扱っているため、ホーキング理論は
ある種の見えにくい「隠し球」となってしまっているが、ホーキングは自分の打ち立てた理論
にとらわれることなく、現代宇宙論全体を語ってくれた。
ここが名著の名著たる所以だと思うばかりだ。
ホーキング、宇宙と人間を語る
本書は「宇宙理論をたった1つの宇宙理論で説明できる万物理論は存在するのか?」
をテーマに全編進んでいきます。
その際、相対性理論や量子力学の基本的な事項を盛りこんで、これらの初心者の読者にも
解りやすく説明しています。これが本書の目玉、いろんな他書を読んでみてもここまで
解りやすく説明しているものはなかなかありません。
結論から言うと「1つの理論で説明できる万物理論は存在しないだろう」というのが
ホーキングの持論でしてその代わりに様々な状況によって対応できるM理論を支持しています。
宇宙はそれぞれ分岐しており、その数は10^500あるそうです。
「ホーキング宇宙を語る」は難解な書物ですが、それ以降の彼の書物はできるだけ読者に解りやすく
書かれています。
彼も高齢になりつつありますので、この続編を著わせるまで生きて、また宇宙物理学のファンを
楽しませて欲しいものです。。