キリストはふたたび十字架に〈上〉
翻訳本としては星3つです。星5つはカザンザキスに対してです。
ギリシャ滞在経験があるので小道具の映像も浮かびますし、時代背景も分かります。
ギリシャ人に尋ねることもできます。
でも、これ、内容を理解できる日本人の読者がどれほどいるのでしょうか。
小説の場所がギリシャなのかトルコなのか、時代設定はいつなのか、
ギリシャとトルコの関係とは、文化とは、宗教とは、行事とは、多数の日本語に訳しきれない専門用語、
そもそもキリスト受難劇とは何なのか、巻末に数ページ割いて注釈を入れるレベルです。
※下巻には訳者あとがきがありますが、作家に関することと訳者の謝辞です。
どーせ読者なんていないし、ギリシャに興味を持っている日本人は少数派と見限り、
バッサリ解説をさぼったとしか思えませんでした。
理解できる人だけ読んでくれればいいかのような自己満足の翻訳に感じました。
予備知識のない日本人が読めば、100%架空の場所でのファンタジーとしか思わないでしょう。
現に、もうひとりのレビュアーが「古典のギリシャ悲劇」などと評価しています。
翻訳本からは、まったく現実味が感じられません。
とにかく、翻訳が不親切です。
Zorba the Greek
村上春樹さんが「遠い太鼓」の中で触れている本です。
なんとなく名前は聞いたことがあったし名作だろうし、読んでみたいと思いましたが邦訳が入手しにくそう。
なので、英語の勉強も兼ねて英訳版を読みました。
原作はギリシャ語で、これは英訳版です。
映画版は見ていないので、そちらとの比較は分かりません。
私にとっては少々単語が難しくてしばらく挫折していたのですが、電子辞書を片手になんとか読み終わりました。私にとっては最初からトップスピードで読める本ではなくて、読んでいくうちにだんだん引き込まれる本でした。
女性の見方が古典的でステレオタイプで、女性読者はちょっと読んでいてムカッと来るとくるかもしれませんが(苦笑)、最後まで読めばそうでもないとも思えます。ちなみに、ギリシャの田舎を閉鎖的で無知蒙昧な感じに書き過ぎだとか、発表当時にギリシャ国内で批判されたような話をどこかでちらっと読んだ記憶があります。
最初と印象が変わるかもしれないので、最後まで読んだほうがいいと思います。なかなかしんみりする。人生ってこんな風かもなあと。
しかし主人公はギリシャの都会の富裕層のボンボンという感じがします(笑)。若く理想にあふれていて。
ギリシャの風土の描写が美しかったです。
ちなみに著者ニコス・カザンザキスの実体験が反映されているようなので、ウィキペディアか何かでカザンザキスについてざっとチェックしてみると良いと思います。
読破するための英語レベルとしては、TOEIC800点以上/英検準1級以上は欲しいところかと思います。
その男ゾルバ (東欧の文学)
二の足を踏む人も多いと思うが、なかなか面白い小説なので、買うことをお勧めする。カザンザキスが三十代の時体験した事実を基に書かれたもので、ゾルバという男の含蓄に富んだ言動の数々が印象深い。特に女に対するふるまいが、ゾルバと「私」とでまるっきり違っていて、笑ってしまう。ギリシャの、とりわけクレタの風俗を知ることができるのも貴重だ。
その男ゾルバ (特別編) [DVD]
原題はただの「ギリシア人ゾルバ」。この映画を見て驚いたのは、クレタ島の住民の余所者と仲間内の異端者に対する恐るべき敵意と反感であった。
彼らは外部から訪れた我らが主人公(アラン・ベイツ)が島一番の美女(イレーヌ・パパス)と恋に落ちて一夜を共にしたと知るや、(まるでヨハネ伝第8章に出てくるような光景!)、全員で石を投げつけ、あまつさえ(まるで子羊をほふるように)ナイフで喉を切り殺してしまうのであるが、かつての華やかな古代文明をになった末裔たちがこんな野蛮な振舞いを実際に行っていたのであろうか?
もしもそうならとんでもない話であるし、事実無根ならこの映画の描き方に対してきちんと提訴するべきだろう。
それにしてももしこれが実話で、おのれが愛した美しい未亡人が村人に虐殺される現場に居合わせた物語の主人公が、何もしないで傍観していたならこれこそ天人'に絶対に許されない行為だと思う。
そしてこの哀れな未亡人役を演じるアラン・ベイツとともに比類ない人物造型を示すのはフランスから村に漂着した元踊り子のリラ・ケロドヴァ、そして表題ゾルバ役のギリシア人を演ずるアンソニークインで、特に後者の人間マグマのごとき不滅の存在感はさながら「最後のネアンデタール人」のようだ。
現世の有象無象を見下して君は最後のネアンデタール人 蝶人
その男ゾルバ [DVD]
思考の流れがとても短絡的で、なのに情緒を重んじる、というところが面白い。
嫉妬や妬みなどがストレートに行動に出過ぎていて、人間という生物ではない別の生き物のお話のように感じるところが多い。
それを異国情緒というのかもしれないが、なんとなく別次元の物語のようで摩訶不思議。
名シーンと言える数々のシーンも私には全く響きませんでした。
アンソニークインは「道」でもそうでしたが、こういう役が似合いますね。
宿の女主人役は役柄と雰囲気がリアル過ぎて痛々しささえ感じてしまいました。アカデミー賞受賞も頷けます。