20世紀少年などで有名な浦沢直樹さんの初期の代表作です。現在の20世紀少年やマスターキートンのようなシブい
アニメとは違い、YAWARA!やHAPPY!など、初期の作品は、もう何でも詰め込んでしまえ!の勢いがある感じが
して、楽しいです。バルセロナオリンピックの最中でさえ色々なサイドストーリーが並行して進む強引さもまた
好きです。また、谷選手の愛称のもとになるほど人気のあったアニメ化作品でもあります。この漫画がなかったら谷選手も
あれほどの注目を浴びることはなかったかもしれませんね。
この漫画の素晴らしいところは、物語の始めから、一つのハイライトに向かって突き進むところです。
猪熊柔をカメラマンとして、見守る男性として追い続ける松田さんの感じた未来、
「ずっと聞こえてたんだ。きみを見た時からずっと……きみを声援する大観衆の声が……」の言葉。
長いこの漫画の中で、普通の女の子になりたかった高校生の女の子がオリンピックの舞台で大観衆を浴びるまでの道筋、
読みながらドキドキせずにはいられません。そして、その夢がかなったときのバルセロナの人々、松田さんの表情、
見開き1ページ使ってテレビを見ている日本の人々の熱狂を伝える様、もう、同じ猪熊柔を応援する一員として
熱狂せざるを得ません。感動してしまいます。
そして、結末、やはり猪熊柔は普通の女の子でもありました。この終わり方、大好きです。
それに、色々な人々が生き生きと、精一杯がんばります。浦沢直樹の漫画ではみなががんばりやさんです。
最初の試合であっさり投げられた藤堂由貴、バルセロナで見せる姿は別人の様です。もちろん、本阿弥さやか、
富士子さん、花園さんなど、ときに笑わせてくれながら、一生懸命な姿を見せ続けてくれます。なんだか好きです。
ごちゃごちゃした描写は好みが分かれるかもしれませんが、バルセロナの大声援の感動を味わって欲しいです。
田村亮子のバルセロナの決勝、小学生の私はラジオ体操に行く直前、同じ熱狂を感じた覚えがあります。