1990年のチャイコフスキー・コンクールに優勝してから10年、やっとそのヴァイオリン協奏曲を収録したわけですが、個人的にはメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲により惹かれ、第3楽章のダイナミックな表現には特に感心しました。力任せに弾くのではなく、理知的に崩れることなく全ての音を弦にのせ、オーケストラと一緒になってクライマックスへ突入する部分はワクワクします。
メンチャイという言葉があるように、ヴァイオリン協奏曲の代表的な2つの曲目ですから、期待度も高まると思います。ケレン味のないとても丁寧で真っ当な演奏でした。彼女ほどの技量があれば、もう少し大見えを切っても良いと思うのですが、良い意味で楷書風の演奏で、過度な表現を排除した真摯なものでした。
彼女の個性の一つとして音の伸びやかさと透明性があげられると思います。過度のヴィブラート等の表現を排除し、訴求力はあるのだけれど、節度のある表現がまた演奏家の知性を感じさせます。このように一般的によく聴かれる曲こそ、王道とも言える堂々とした表現力のある演奏が望ましい、と思いました。
ヴラディーミル・アシュケナージの指揮も至極正統派で、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団の演奏も彼女の演奏と同様、真面目に音楽を追求した、という感じを受けました。
ストラディヴァリウスの"ドルフィン"を使用とのこと。そのせいかどうかは分かりかねますが、弱音の艶やかさはしっかりと伝わってきました。伝統あるドヴォルザーク・ホールの雰囲気を捉えた録音ですので、メリハリを期待する向きには物足りないかもしれませんが、ホールの真ん中で聴いているような豊かな響きが感じ取れました。
ツィゴイネルワイゼン、ハンガリー舞曲、ヴォカリーズ、ブルッフのヴァイオリン協奏曲と、日本人に愛好されている曲ばかりで構成されたベストアルバム。諏訪内晶子の艶のある音色を是非聴いてみてください。
私が作成した"リストマニア"リスト「民主党とマスコミから日本を守るために」も参考にしていただけますと幸いです。
3つの収録曲の中で諏訪内さんが弾いているのはパガニーニだけなので、彼女を見たかった人にはもう1曲ボーナストラックでも欲しい感じですが、映像が左指、右腕とアップ、よく観察でき、何度も繰り返し見て楽しんでいます。早いパッセージの演奏途中で弓が1本切れるハプニングも写っていて面白い。(演奏に邪魔にならないかと冷や冷やしながら、事の次第を見守っていました。)それと、べートーヴェンの交響曲第8番も収録されているのはお得な感じ。
軽やかで太陽の日差しが似合う印象のバッハです。 よく手がのびるCDです。 ほとんど全曲、素敵です。 飛ばして聴く曲がないです。
前回のベートーヴェン、ヴァイオリン・ソナタ7&9から4年。前のCDの帯には「全10曲への挑戦」と記されていたので、てっきりベートーヴェンと思っていたら、バルトーク、エネスコ、ファリャ、クライスラー、ドビュッシーの作品集である。バルトークやエネスコは好きな作曲家なので嬉しい誤算だった。 バルトークはルーマニア民族舞曲。図太い力強い音から、かすれて消えゆきそうになりながらも芯のある音まで使い分けるのが上手な彼女にはもってこいの小品である。奇妙でクールな曲調の(と個人的に思っている)エネスコのヴァイオリン・ソナタ第3番は、思わぬほど彼女のヴァイオリンにマッチしていると感じた。グイグイと曲に引きこまれ曲に没頭できた。定番と思われるファリャは意外なほど力強さを感じなかった。スペイン民謡組曲第2曲:ナナのたっぷりとした弾き具合が印象に残った。ドビュッシーの亜麻色の髪の乙女は絶品である。このヴァイオリンの音はいつまでも聞いていたいとも感じさせる。 先のNHKで放送されたブルッフは少し期待とはずれていて、最近あまりいい噂の聞かれなかった彼女だけに、もういい演奏が聴けなくなるのではないかと心配していたが、これだけの作品を出してもらえば今後もずっと聴いていきたい演奏家の一人として歓迎できる。また長く待たされるのかもしれないが、次回作も期待している。
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